不動産コラム

2026年7月27日

オフィスの受動喫煙対策ガイド|喫煙室の設置条件と物件選びの確認項目

事業所の屋内は原則として禁煙とされ、喫煙できる場所を設けるには一定の条件を満たす必要があります。制度としては定着した一方、実際に移転や新規開設の場面になると「この物件で喫煙室を作れるのか」「共用の喫煙所はあるのか」という判断が必要になり、物件側の条件に左右されることが分かります。排気を屋外まで通せない、区画できる場所がない、といった理由で断念するケースは珍しくありません。

本稿では、名古屋市内で事業用物件を検討する総務・管理部門の方向けに、事業所に求められる受動喫煙対策の考え方、喫煙室を設けるときの選択肢、設置に必要な物件側の条件、賃貸物件で工事を行う際の手続き、そして退去時の扱いまでを整理しました。制度の詳細や個別の適合判断は所管の行政窓口および設計・施工の専門家にご確認ください。本記事は物件選定にあたって確認すべき論点を整理する目的の情報です。

事業所に求められる受動喫煙対策の考え方

屋内は原則禁煙という前提

多数の人が利用する施設では、屋内での喫煙が原則として認められていません。オフィスや事業所もこの対象に含まれ、何も手当てをしなければ屋内は禁煙となります。喫煙できる場所を残したい場合は、定められた基準を満たす区画を設ける必要があります。

施設の区分によって扱いが異なる

施設は用途によって区分され、学校や病院、行政機関など特に配慮が求められる施設では、より厳しい取り扱いとなります。一般の事業所はこれとは別の区分に位置づけられ、基準を満たす喫煙室の設置が認められています。同じビルに複数の用途が入っている場合、建物全体の方針が自社の運用に影響することがあるため、建物側のルールもあわせて確認します。

標識の掲示と管理の責任

喫煙できる場所を設けた場合は、その旨を示す標識の掲示が求められます。あわせて、決められた場所以外での喫煙が行われないよう管理する責任が施設の管理者側にあります。設備を整えるだけでなく、運用のルールを社内で定めておくことが前提になります。

喫煙できる場所を設けるときの選択肢

喫煙専用室を設ける

喫煙のみを目的とする区画を設ける方法です。基準を満たした構造・設備が必要で、その中では飲食を行えません。休憩スペースを兼ねたい場合には、この点が運用上の制約になります。

加熱式たばこ専用の喫煙室を設ける

加熱式たばこに限って喫煙できる区画を設ける方法です。この区画では飲食を行うことが認められており、休憩室と兼ねる設計が可能です。ただし紙巻きたばこは対象外となるため、社内の実態と合っているかを事前に確認する必要があります。

屋外に喫煙場所を設ける

建物の外に喫煙場所を設ける方法です。屋内での工事が不要になる一方、設置できる場所があるか、近隣や他テナントへの影響がないか、雨天時にどうするかといった検討が必要です。ビルの共用部や敷地内に設ける場合は、当然ながら建物側の承諾が前提となります。

建物共用の喫煙所を利用する

ビルにあらかじめ共用の喫煙所が設けられている物件を選ぶ方法です。自社で工事を行う必要がなく、原状回復の負担も生じないため、実務上もっとも負担が軽い選択肢です。ただし場所や利用時間、他テナントとの共用状況によって使い勝手が変わります。

喫煙室の設置に必要な物件側の条件

基準を満たす喫煙室は、どの物件にも作れるわけではありません。物件を絞り込む段階で、以下の条件が成立するかを確認します。

屋外への排気ルートを確保できるか

喫煙室内の空気を屋外へ排出できることが前提となります。ダクトを外壁や既存の排気シャフトまで通せるかが最初の関門で、区画の位置が建物の中央寄りだったり、外壁までの距離が長かったりすると成立しにくくなります。既存の排気設備を使えるかどうかは、建物の図面と管理会社への確認が必要です。

区画できる位置があるか

喫煙室は、煙が外に漏れないよう壁や天井で仕切る必要があります。柱の位置、窓のライン、天井の構造によっては、意図した場所に区画を作れないことがあります。天井まで届く間仕切りを立てる計画になるため、消防・建築の観点からの確認も同時に必要です。

出入口の気流を確保できるか

出入口において、室外から室内へ空気が流れ込む状態を保つことが求められます。排気だけでなく、その分の空気をどこから取り入れるかを設計に織り込む必要があり、区画が密閉的な位置にあると成立が難しくなります。実際の性能は測定によって確認することになるため、設計段階から専門業者の関与が前提です。

電源と設備の容量

排気ファンや空気清浄機を動かすための電源が必要です。区画の位置によっては配線の引き回しが発生し、既存の電気容量に余裕がなければ増設の検討も必要になります。

面積の割り当て

喫煙室を設けた分だけ、執務や会議に使える面積は減ります。何名が同時に使う想定かを決めたうえで、必要な広さを算出し、全体のレイアウトのなかで成立するかを検討します。物件の広さを検討する段階から、この分を見込んでおくのが実務的です。

賃貸物件で工事を行うときの手続き

貸主の承諾が前提

間仕切りの新設、外壁の貫通、既存排気設備への接続はいずれも建物に手を加える行為であり、貸主の承諾なしに進めることはできません。とくに外壁に開口を設ける工事は認められないことも多く、この一点で計画が成立しなくなる場合があります。物件を決める前に可否を確認しておくべき項目です。

消防・建築の観点との同時検討

天井まで届く間仕切りを設ける工事は、消防用設備や内装制限の観点からも検討が必要です。感知器やスプリンクラー、誘導灯との干渉、仕上材の条件などを排気設計と同時に整理しないと、後から設計変更が発生します。

撤去時にどこまで復旧が必要か

退去時に喫煙室を撤去し、外壁の開口や排気設備を元に戻す必要が生じます。復旧の範囲と方法を工事の計画段階で貸主と確認し、書面に残しておくことで、退去時の見解の相違を防げます。

共用喫煙所がある物件を選ぶ場合

確認しておきたい事項

場所(屋内か屋外か、何階か)、利用できる時間帯、収容人数、清掃や維持管理の状況を確認します。加熱式たばこと紙巻きたばこの扱いが分かれている場合もあるため、社内の実態と照らして使えるかを判断します。

距離と動線を確認する

自社の区画から喫煙所までの移動時間は、日々の業務時間に積み重なります。上下階の移動が必要な場合はエレベーターの待ち時間も加わります。距離が遠すぎると、決められた場所以外での喫煙につながりかねず、管理の面でも望ましくありません。

他テナントとの共用状況

建物内のテナント数に対して喫煙所の規模が小さいと、混雑して使いにくくなります。内見の際に実際の様子を確認できると判断材料になります。

標識の掲示と社内ルールの整備

標識の掲示

喫煙できる場所には、その区分に応じた標識を掲示します。あわせて、禁煙である旨を建物や区画の入口で示すことが求められる場合もあります。標識の様式や掲示場所については所管の窓口の案内を確認してください。

年齢に関する立入制限

喫煙できる区画には、20歳未満の立入りが認められていません。従業員であっても同様で、清掃や設備点検のために立ち入らせることもできない点に注意が必要です。清掃の担当や委託先との取り決めにも影響します。

就業規則と採用時の説明

喫煙に関する社内ルールを明文化しておくと、運用が安定します。休憩の取り方、来客への案内方法、他テナントとの共用部での扱いなどを定めておきます。採用面接の場で職場の喫煙環境を尋ねられることもあるため、方針を整理しておくと説明がしやすくなります。

退去時と受動喫煙対策の関係

臭気と汚れの扱い

長期間の喫煙により、壁や天井、床材に臭気や汚れが残ることがあります。事業用の契約では通常の使用による損耗も借主負担とされることが多く、原状回復の費用に影響する可能性があります。喫煙室を設ける場合は、内装の仕様を選ぶ段階で清掃・更新のしやすさも考慮に入れます。

設備の撤去

排気ダクト、ファン、間仕切り、空気清浄機などの撤去範囲を確認します。外壁の開口の復旧方法は費用に差が出る部分であり、設置時に取り決めておくべき論点です。

喫煙環境を条件に含めるときの確認リスト

  • 建物に共用の喫煙所があるか、屋内か屋外か、利用時間と収容人数
  • 共用喫煙所での加熱式たばこ・紙巻きたばこの扱い
  • 自社区画内に喫煙室を設ける場合の、貸主の承諾方針
  • 屋外への排気ルートを確保できるか(外壁の貫通可否、既存シャフトの利用可否)
  • 区画を設けられる位置と、天井までの間仕切り工事の可否
  • 給気の確保と、必要な電気容量の余裕
  • 喫煙室に割り当てる面積と、残る執務面積の妥当性
  • 消防用設備・内装制限との干渉の有無
  • 標識の掲示場所と、建物側の掲示ルール
  • 退去時の撤去範囲と原状回復の方法

よくあるご質問

Q. 小規模なオフィスでも屋内は禁煙になりますか?

A. 事業所は屋内原則禁煙の対象に含まれるのが基本的な考え方です。規模によって一部の施設に経過的な取り扱いが設けられている場合もありますが、一般的なオフィスでは屋内での喫煙は基準を満たす区画に限られると考えて計画するのが安全です。個別の適用については所管の窓口にご確認ください。

Q. 加熱式たばこであれば自由に吸えますか?

A. 加熱式たばこも規制の対象で、専用の喫煙室を設けるなどの対応が必要です。ただし、加熱式たばこ専用の喫煙室では飲食が認められている点が紙巻きたばこ用との違いです。休憩室と兼ねたい場合は、この区分が選択肢になります。

Q. 喫煙室を作れるかどうかは内見の時点で分かりますか?

A. 外壁までの距離、既存の排気設備の有無、区画できる位置といった大枠は内見で把握できます。ただし実際に基準を満たせるかは、排気量や気流の設計を経て判断されます。設置を前提に物件を探す場合は、候補を絞った段階で施工業者に現地を見てもらうことをおすすめします。

Q. 貸主が外壁への開口を認めない場合、他に方法はありますか?

A. 既存の排気シャフトを利用できないか、共用の喫煙所を使えないか、屋外に場所を設けられないかといった選択肢を検討することになります。いずれも難しい場合は、その物件では屋内に喫煙室を設けられないという前提で判断することになります。

Q. 共用喫煙所がある物件なら自社での対応は不要ですか?

A. 設備面の負担は軽くなりますが、自社区画が禁煙であることを示す掲示や、決められた場所以外で喫煙が行われないようにする社内の管理は必要です。あわせて、来客への案内方法も決めておくと運用が安定します。

Q. 喫煙室を設けると退去時の費用は増えますか?

A. 間仕切りや排気設備の撤去、外壁開口の復旧が必要になるため、設けない場合に比べて負担は増えるのが一般的です。壁や天井への臭気の付着が原状回復の範囲に影響する可能性もあります。設置時に復旧の範囲と方法を書面で確認しておくことをおすすめします。

まとめ

事業所の屋内は原則禁煙であり、喫煙できる場所を設けるには基準を満たす区画が必要です。実際に設置できるかどうかは物件側の条件に大きく左右され、屋外への排気ルートを確保できるか、区画できる位置があるか、給気と気流を成立させられるかが要点になります。外壁への開口が認められない物件では計画自体が成立しないこともあるため、設置を前提とするなら物件を決める前に可否を確認しておく必要があります。

自社で設けずに済ませたい場合は、共用の喫煙所がある建物を選ぶのが実務上もっとも負担の軽い方法です。いずれの選択でも、標識の掲示と社内ルールの整備は必要になります。制度の詳細や個別の適合判断は所管の行政窓口および設計・施工の専門家にご確認ください。名古屋市内で事業用物件をお探しで、喫煙環境を条件に含めた物件の絞り込みが必要な場合は、当社までお気軽にご相談ください。

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