不動産コラム
2026年5月13日
オフィスの省エネ・電気代対策と物件選び|物件側の省エネ性能とテナント側の運用工夫

オフィスの電気代は、空調・照明・OA機器・サーバー・休日待機電力といった複数の要因の積み重ねで決まります。電気料金の値上がりが続くなかで、コスト削減担当者・総務担当者の方からは「物件選びの段階で省エネ性能を見るべきか」「入居後の運用でどこまで工夫できるか」というご相談をいただく機会が増えています。電気代の最適化は、ビル側で提供される省エネ性能と、テナント側で行う運用の工夫の二層で考えるのが現実的です。
本稿では、名古屋でオフィス・店舗の仲介・管理に携わる立場から、オフィス電気代の構成要素、物件側で確認したい省エネ性能、テナント側の運用工夫、デマンド契約・基本料金の論点、業態別の電力消費傾向、そして物件選定時に押さえておきたい確認項目を整理します。費用対効果のある対策を組み立てるための判断材料としてご活用ください。
オフィスの電気代対策は、エネルギー価格の変動・働き方の多様化・ESGへの関心の高まりを背景に、企業の総務・コスト削減担当者にとって優先度の高いテーマになっています。電気代は単一の要素で決まるものではなく、空調・照明・OA機器・サーバー・休日の待機電力など、複数の用途別消費が積み上がって毎月の請求額になります。したがって対策も、物件側の省エネ性能(設備のグレード)とテナント側の運用工夫(使い方の改善)の二層で考えるのが効果的です。
本稿では、経営層・総務・コスト削減担当者の方向けに、オフィス電気代の構成要素を整理したうえで、物件側で確認したい省エネ性能、テナント側で取り組める運用工夫、デマンド契約・基本料金の論点、業態別の電力消費傾向、物件選定時のチェックポイントを順に解説します。具体的な削減額は契約・季節・使用形態によって変動するため、本稿では金額断定ではなく「どこに削減余地があり、どのように検討すれば効果が期待できるか」という観点で整理しています。
オフィス電気代の構成要素
対策を検討するには、まず自社のオフィスでどの用途にどの程度の電力が使われているかを把握することが起点になります。一般的な事務系オフィスでは、おおむね以下の用途で電力が消費されています。
- 空調(冷房・暖房・換気): オフィス電力消費の中で大きな比率を占める用途。建物の断熱性能・空調機器の世代・運用設定で変動します。
- 照明: 蛍光灯ベースかLEDかで消費電力が大きく変わる用途。点灯時間が長いオフィスほど影響が出ます。
- OA機器(PC・モニター・複合機): 在席人数・稼働時間に比例する用途。スリープ・電源管理の運用で削減余地があります。
- サーバー・ネットワーク機器: 24時間稼働するため、台数や仕様によって基礎消費電力に影響します。
- 休日・夜間の待機電力: 退勤後・休日に消費される電力。OA機器の主電源・分電盤レベルでの管理状況で大きく変わります。
用途別の比率は事業内容・在席人数・サーバーの有無・営業時間によって変動します。電気使用量明細(電力会社から提供される需要実績)や、デマンド計測・分電盤計測の結果があれば、まずは月別・時間帯別の使用パターンを確認することから始めるとよいでしょう。実測データが乏しい場合でも、空調・照明・OA・サーバー・待機電力の大まかな比率を仮定して論点を絞ることはできます。
物件側の省エネ性能
物件側で備わっている設備・建物性能は、入居後にテナントが変えにくい要素です。物件選定の段階で確認しておくと、入居後の電気代の前提条件を有利に設定できます。
空調設備の更新状況
業務用空調機(中央熱源式・個別空調・パッケージエアコン等)は、世代によって省エネ性能に差があります。新しい機種ほどインバーター制御や高効率コンプレッサーの採用が進んでおり、同じ冷暖房能力でも消費電力を抑えやすい設計になっています。物件選定時には、空調機の更新時期・方式(中央式か個別空調か)・メンテナンス履歴を確認し、可能であれば機種の世代も把握しておくとよいでしょう。中央式は運用ルールがビル側に依存し、個別空調はテナント側で温度設定や運転時間を制御しやすいという違いがあります。
LED照明の導入状況
共用部・専有部の照明がLED化されているかは、消費電力に直接影響します。蛍光灯と比較してLEDは消費電力が低く、点灯時間が長いオフィスほど運用面での削減余地が出やすい用途です。共用部はビル側の運用となるため、物件によっては階段室・トイレ・廊下のLED化状況を確認するとよいでしょう。専有部の照明が蛍光灯ベースの場合、入居時に貸主と相談してLED化を行うか、原状回復条件を確認したうえで自社負担で交換するかを検討します。
断熱性能・窓の仕様
建物の断熱性能と窓のガラス仕様は、空調負荷に影響する基礎要素です。複層ガラス(ペアガラス)や遮熱フィルム・Low-Eガラスの採用、断熱材入りの外壁・屋根構造かどうかは、夏場の冷房負荷・冬場の暖房負荷に効いてきます。築年数の古い物件でも、貸主側で窓の改修やフィルム施工を行っているケースがあるため、外観・スペック表だけでなく実際の仕様を確認することをおすすめします。窓面積が広いオフィスは特に影響が出やすいため、内見時に方位・日射条件・既存のブラインド設備も合わせて確認しておくとよいでしょう。
建物グレードとビル管理運用
ハイグレードビル・新築ビルでは、省エネ法対応・BEMS(ビル・エネルギー管理システム)の導入・センサー連動の照明制御などが標準で組み込まれている場合があります。一方、築年数のある物件でも、貸主側で計画的に空調更新やLED化を進めているケースは多くあります。建物の築年数だけで省エネ性能を判断するのではなく、設備の更新状況・管理体制まで含めて確認することがポイントです。電気容量(契約アンペアや変電設備の余裕)もここに含めて確認すると、入居後の機材増設にも対応しやすくなります。
テナント側の運用工夫
物件側の性能を踏まえたうえで、入居後の運用でも電気代の削減余地は確保できます。設備投資を伴わずに着手できる工夫から、初期投資を伴うがリターンが見込める対策まで段階的に整理します。
空調の設定温度・運転時間管理
個別空調が導入されている物件では、設定温度・運転時間・換気の運用ルールをチームで共有することが、最も着手しやすい削減策です。クールビズ・ウォームビズに準じた室温設定、始業前のプレ空調(短時間で冷やす・温める)、不在エリアでの空調オフ・弱運転、退勤時の確実な停止といった運用は、設備投資を伴わずに継続的な効果が期待できます。タイマー機能や中央コントローラーで運転時間を管理できる場合は、設定値を一元化しておくと属人化を避けられます。
OA機器の電源管理
PC・モニター・複合機・周辺機器の電源管理は、特に夜間・休日の待機電力に効いてきます。OS側のスリープ・休止モード設定、電源タップでの主電源管理、複合機のスケジュール起動・停止、長時間離席時のモニターオフといった運用は、台数が多いほど積み上げ効果が出やすい領域です。テレワーク・出社のハイブリッド運用が定着した事業者では、出社人数の少ない曜日に空調・照明・OA機器の運用を縮小するルールも検討対象になります。
在席連動制御・人感センサー
会議室・トイレ・倉庫など、利用頻度が断続的な場所には人感センサー連動の照明制御が有効です。会議室予約システムと空調・照明を連動させる仕組みもあり、利用がない時間帯の自動オフを設計に組み込めます。専有部の改修が認められる物件では、入居時の内装工事に合わせて検討するとコスト負担を抑えやすくなります。改修が難しい場合でも、後付けの人感センサースイッチ・スマートプラグなど、原状回復に支障の少ない方法を選ぶと運用に乗せやすくなります。
休日・夜間の待機電力削減
退勤後・休日の待機電力は、見えにくい一方で年間で積み上がると無視できない用途です。退勤時のチェックリスト運用(空調・照明・OA機器の主電源確認)、休日前のサーバー以外の機器の集中オフ、分電盤レベルでの夜間待機系統の遮断などが選択肢になります。サーバーやネットワーク機器のように24時間稼働が必要なものとそうでないものを分けて、停止可能な系統を切り分ける工夫が有効です。
デマンド契約・基本料金の論点
事業用の電力契約では、使用量に応じた従量料金に加えて、契約電力(デマンド)に基づく基本料金が請求されます。基本料金は最大需要電力(直近の使用ピーク)を基準に設定されるため、ピーク値を抑えることが基本料金の最適化につながります。
契約電力(デマンド)の仕組み
高圧受電のビルや、ある程度の規模のオフィスでは、30分単位で計測される需要電力の最大値を基準に契約電力が決まる仕組み(デマンド契約)が一般的です。夏場の冷房ピーク時間や、始業時に空調・OA機器が一斉に立ち上がる時間帯にピークが出やすいため、ピークシフト(立ち上げ時間の分散)・ピークカット(同時使用の抑制)が論点になります。物件によってはビル全体で契約しているケースもあり、個別テナントが直接基本料金を最適化しづらい場合もあります。電気代の精算方式(後述)と合わせて確認することが大切です。
季節別・時間帯別単価
業務用電力の料金メニューには、季節別・時間帯別に単価が異なるプランが含まれていることがあります。夏場のピーク時間帯は単価が高く、夜間や休日は単価が低い構造のメニューでは、可能な範囲でピーク時間帯の使用を抑える運用が効きます。蓄電池・蓄熱式空調のような大規模設備投資を伴う対策は、規模・契約条件によって採算性が変わるため、専門業者の試算を踏まえて判断するのが現実的です。中小規模オフィスでは、まず運用面でのピーク抑制から着手するのが取り組みやすいアプローチになります。
物件選定で確認したい項目
省エネ・電気代対策の観点から、物件選定の段階で確認しておきたい項目を整理します。内見・契約前のヒアリングで押さえておくと、入居後の運用設計がスムーズになります。
- 空調方式と更新履歴: 中央熱源式か個別空調か、空調機の更新時期、メンテナンス履歴。
- 空調の運用時間: 中央式の場合、稼働時間帯・休日対応・延長運転の可否と費用負担。
- 共用部・専有部のLED化状況: 蛍光灯か LED か、LED化の予定・テナント側施工の可否。
- 窓・断熱の仕様: 単板ガラスか複層ガラスか、遮熱フィルム・Low-Eガラスの有無、方位と日射。
- 電気容量の余裕: 契約アンペア・変電設備の余裕、サーバーや機器増設時の容量増加可否。
- 電気代の精算方式: 各テナント子メーター精算か、共益費に含む方式か、按分方式か。
- 共益費の内訳: 共益費に含まれる電気代の対象範囲(共用部のみか、空調を含むか)。
- BEMS・計測環境: ビル全体・テナント単位でのエネルギー計測が行われているか、データ提供の可否。
- 原状回復の範囲: 入居時に行うLED化・人感センサー設置等の改修と、退去時の取り扱い。
これらは物件によって対応可否や条件が異なります。事業用物件の仲介では、こうした項目を事前に書面で確認したうえで内見・契約に進むと、入居後の電気代の前提条件を明確にできます。
業態別の電力消費傾向
業態によって電力消費の中心となる用途が異なるため、対策の重点も変わります。代表的な業態について整理します。
サーバー多用業態(IT・データ処理系)
自社サーバー・ネットワーク機器を多く運用する事業者は、24時間稼働の基礎消費電力と、サーバー室の冷房負荷が電力消費の中心になります。サーバー機材の集約・仮想化、クラウドへの移行検討、サーバー室の温度設定見直し、ホットアイル・コールドアイルの整理といった対策が論点になります。物件選定時には、サーバー室を設置できる電源容量・空調・床荷重・24時間運用の可否が確認項目になります。
受託開発・専門サービス業
多人数のPC作業を中心とする受託開発・コンサルティング・士業などでは、PC・モニター・照明・空調が主要な消費用途です。在席人数・営業時間・テレワーク比率によって消費構造が大きく変わるため、出社日の集約や空調・照明のゾーン管理が運用面の論点になります。OA機器の電源管理、人感センサーの活用、夜間・休日の待機電力削減など、設備投資を伴わない運用工夫の余地が大きい業態です。
小売・物販・店舗系
店舗系の事業者は、照明・空調に加えて、ショーケース・冷蔵冷凍機器・調理機器など業態固有の電力消費が加わります。営業時間が長い・夏場の冷房負荷が高い・厨房や什器の発熱があるといった条件が重なるため、LED照明・高効率冷蔵機器・空調と換気のバランス調整が中心的な論点になります。物件選定では、電気容量の余裕、必要なガス・給排水・排煙設備の有無、看板・外照の電気代精算方式までを併せて確認するのが実務的です。
よくあるご質問
Q. 築古物件は電気代が高くなりますか?
一概に「築年数が古い=電気代が高い」とは言えません。築古でも、貸主側で空調更新・LED化・窓の改修などを計画的に行っている物件は多くあります。一方、設備が更新されていない物件では、断熱性能や空調効率の面で不利になる可能性はあります。築年数だけで判断するのではなく、空調機の更新時期・LED化状況・窓の仕様・電気容量といった具体的な仕様を確認することをおすすめします。賃料水準と省エネ性能のバランスを総合的に評価するのが、現実的な選び方です。
Q. 電気代は共益費に含まれますか?
物件の精算方式によって異なります。専有部の電気代はテナントが電力会社と直接契約して支払う方式、貸主が一括で受電してテナントに按分・請求する方式、共益費に含めて定額で扱う方式などが見られます。共益費に含まれる場合でも、対象範囲(共用部のみか、専有部空調まで含むか)は契約により異なるため、契約前に書面で確認しておくと、入居後の精算トラブルを避けられます。電気代の使用実績を可視化したい事業者は、子メーター付きで実費精算できる物件のほうが運用しやすい傾向があります。
Q. 再エネ電力への切り替えはどう考えればよいですか?
再エネ電力(再生可能エネルギー由来の電力プランや、非化石証書を組み合わせたプラン)は、電力会社・小売事業者から複数のメニューが提供されています。ESG・脱炭素の観点から取引先や投資家から要請されるケースもあり、企業として選択肢のひとつになっています。料金水準・契約条件・由来電源の内訳・証書の取扱いなどはメニューによって異なるため、自社の方針と現行契約を踏まえて比較検討するのが現実的です。本稿では特定サービスの推奨は行わず、検討項目として紹介するにとどめます。物件によっては、ビル全体の電力契約が貸主側にあり、テナントが個別に切り替えられないケースもあるため、契約構造の確認が前提になります。
Q. 削減効果はどの程度見込めますか?
削減効果は、契約メニュー・季節・在席人数・使用機器の構成・現在の運用水準によって大きく変動します。同じ施策でも、すでに省エネが進んでいるオフィスでは追加効果が出にくく、未対策のオフィスでは比較的大きな余地が残っているのが一般的です。本稿では具体的な削減金額や率の断定は避け、「どこに削減余地があり、どの順番で取り組むと効果が期待しやすいか」という観点で整理しています。実数値は、電気使用量明細の分析と試算を踏まえて評価するのが正確です。
まとめ
オフィスの省エネ・電気代対策は、物件側で備わっている省エネ性能(空調更新・LED照明・断熱・窓・建物グレード)と、テナント側の運用工夫(空調設定・OA電源管理・在席連動制御・休日待機電力削減)の二層で組み立てるのが現実的です。電気代の構成は空調・照明・OA機器・サーバー・待機電力の積み上げであり、自社の用途別比率を把握することが対策の起点になります。デマンド契約・基本料金の論点や、季節別・時間帯別単価の活用も、規模に応じて検討余地があります。
物件選定の段階では、空調方式・更新履歴・LED化状況・窓断熱・電気容量・電気代の精算方式・共益費の内訳といった項目を書面で確認することで、入居後の電気代の前提条件を明確にできます。業態によって電力消費の重点が異なるため、サーバー多用業態・受託開発・小売物販などの特性に応じた対策設計が有効です。具体的な削減効果は契約・季節・運用水準で変動するため、断定的な金額ではなく、削減余地のある領域を順序立てて取り組むことが、無理のないコスト最適化につながります。
会社概要
店舗名・・・株式会社ビルプランナー
所在地・・・〒460-0002 愛知県名古屋市中区丸の内2丁目18番14号
電話番号・・・052-218-4555
関連エリア
省エネ・電気代対策の観点で物件をご検討の事業者様には、空調更新やLED化が進んだオフィスビルが集積する名古屋市の中心エリアもおすすめです。近隣の丸の内、名古屋市中区、名古屋市の事業用物件もあわせてご検討いただけます。
対応地域
名古屋市の中心業務地区である丸の内・伏見・栄・名駅、官公庁エリアの中区、ターミナル拠点となる金山周辺をはじめ、名古屋市全域で、省エネ性能を備えた事業用オフィス・店舗物件のご紹介を行っております。空調更新やLED化の進度、電気容量の余裕、電気代の精算方式といった観点でも物件情報を整理しておりますので、コスト最適化を視野に入れた物件選びをご検討の事業者様はお気軽にご相談ください。
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